pinotannのブログ

消費の覚え書きと世間話です

幼児教育の意味を誤解すると、期待を裏切られます

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30代後半の夫婦が、5歳のこどもの教育にお金と情熱を傾けています。

夫婦は2人とも日本人で、彼らは夫の仕事の関係でニューヨークに住んでいます。

ニューヨークで暮らしている自分たちのことを自慢したくてたまらなかったらしく、SNSに写真をのせていました。休暇のたびに一流ホテルでリゾートを満喫するという暮らしを公開していました。

こどもができてからも子連れの旅行を楽しみ、こどもの1歳の誕生日には60人の知人を招いてパーティを開いています。

この辺が彼らの得意の絶頂だったのでしょうか。

それからはニューヨークセレブもこどもを通わせているという幼児教育施設に、自分たちのこどもを通わせはじめました。そこは1年の授業料が4万ドルかかります。幼児向けの英語レッスンや日本語の勉強のための公文なども加えると、1日に習い事を掛け持ちする日もあります。

こどもの送り迎えにママが使う車も必要だし、幼児教室のお金もかさみます。パパは日本一の私大を出ていますが、ハーバードへの留学はかないませんでした。そのためこどもを将来ハーバード大へ入れたいと思っていて、教育にはいっそう力が入るのです。

そこで悩みが出てきました。

私立小学校の授業料が高すぎて払えそうもないことがわかったのです。どうしようかと途方にくれましたが、それでも救いはありました。授業料が無料の公立小学校にも教育レベルの高いところがあって、「そこに通わせることができたらハーバード大に入れられるかもしれない」ということをママが誰かから聞いてきたのでした。

学区があるので、セントラルパーク近くのアパートに引っ越しました。狭くて家賃も高いけれど仕方がありません。当然その小学校は競争率が高いので、今できるだけのことをこどもに詰め込んで、その小学校に入れることが親として出来る最良のことだとパパとママは信じています。

 

整理すると、あこがれのハーバード大学にこどもを通わせるために、幼児教育をしっかりして、良い小学校に入れる。そうするとエスカレーター式に一流大学へ行けるはず、と思っているのです。

 

              ☆☆☆

 

ここから私の意見になります。

まず最初に思ったのは、歴史は繰り返すのだなあということです。わたしは昔ロンドンに住んでいましたが、まわりの駐在員たちが先に書いたニューヨークの夫婦と同じようなことをしていました。

当時はバブルで会社にお金があったから、若い社員をどんどん夫婦で海外に赴任させました。当人たちは海外赴任にはしゃいで、ヨーロッパ中を旅行してまわるのですが、旅って意外と飽きるのです。よほど好きな人でない限り。

そのうちにこどもができて遊んでばかりもいられなくなり、外国でのこどもの教育に悩みはじめます。結局は日本にいるパパママと同じく、習い事でこどものスケジュールをいっぱいにして、ママはその送り迎えに時間と労力を注ぐのです。そうそう、公文式って日本人の住むところなら、どこにでもあるらしいです。

そうしてこどもたちはどうなったか。そういうママたちと長い間友だち付き合いをしているから事実を述べられるのですが、こどもたちは大した大学に入っていません。見事に普通というか、せいぜい中学から日本一の私大に入った子がひとりとか、あとはマーチが多いです。

 

              ☆☆☆

 

そもそも、幼児教育というのはこどもの可能性を探り、伸ばすことであって、有名大学に入れるために施すものではないようです。就学前のこどものにとっての教育、習い事はあくまでパパやママとの楽しいコミュニケーションの手段に過ぎません。ただ、その楽しく幸せな記憶が、こどもの人生観を左右するくらい大切なものなのです。乳幼児に必要なのは養育者から正しく愛されることだけです。そのことが広い意味でのこどもの能力を伸ばすことになるのだと思います。お金が必要になるのはもっと後の話です。

一流大学へ入れることが最良の教育と思っていて、行かせたいのであれば、10歳くらいから受験塾へ入れるのが、費用対効果が一番高いです。

 

ちなみに、わたしはこどもを一流大学へ行かせることが親の務めとは思っていません。

いまどき、有名大学へ行ったくらいで幸せな人生が送れるなど、幻想と思います。

こどもの適性を見極めて伸ばしてやること、知育徳育体育のバランスをよくすること。そして子育ての最終目的は、こどもの自立と思っています。